外食クオリティサービス大賞 お問い合わせ
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第一回外食QS大賞総括
渋谷行秀
(株)日本エル・シー・エー
執行役員F事業本部長
渋谷行秀
2007年2月19日。雲ひとつない晴天の中、代々木公園の隣にある国立オリンピック記念青少年総合センターにて第一回外食クオリティサービス大賞が開催された。当日は、500名に及ぶ業界関係者・覆面調査モニターが参加し、2次審査を通過した5社の取り組みについてのプレゼンテーションが行われた。


外食クオリティサービス大賞の設立意義

外食市場全体は97年をピークに縮小傾向に転じ、多くの一般的な企業では収益性を落としています。そのような状況下、生き残りを懸け、外食企業にとって顧客感動満足を追求し続けることの重要性が増大しています。クオリティサービスに取り組んでいる優良外食企業とその取り組みを広く業界に発信し、業界の活性化に貢献すべく外食クオリティサービス大賞を設立しました。


クオリティサービスの定義
「商品力」×「店舗力」×「人間力」 細部に拘り、継続的・恒常的に顧客感動満足を追及し続けること

つまり、顧客感動満足の継続的・恒常的な提供を目的として、なんらかの仕組み・システムを背景に生み出される、安定的に質の高いサービスを意味しております。その上で、サービスの定義を「商品力」×「店舗力」×「人間力」と致しました。(右図)
これは、サービスを「商品力」×「店舗力」×「人間力」の集合体(総合力)としてとらえる必要があることを意味しております。「商品力」×「店舗力」×「人間力」に影響を与えるいくつもの仕組み・システムが機能して、お客様の感動を創造する安定的に質の高いサービスが実現できると考えております。
また、中でも「人間力」は、それ単体として主に接客を意味しますが、ベースとなる「商品力」×「店舗力」に関わるメニューや内外装を考えるのもまた人間です。そのような意味では、「人間力」がもっとも重要な要素と捉えております。


1次審査とミステリーショッピングリサーチ
今回は2006年5月〜12月まで毎月1回以上(3店舗以上にて)のミステリーショッピングリサーチ(以下MSR)を実施した企業ないし企業内グループ(部門)の約150エントリーから、顧客感動満足度が安定的に高く、またこの期間内の改善度の高い12社がノミネートされた。この1次審査を通過した企業は下表のとおりである。

社名
ブランド名(業態)
アトモスダイニング(株) 辛辛(居酒屋)
(株)アジルカンパニー わいず(お好み焼き)
(株)アレフ びっくりドンキー(ハンバーグ)
ぺぺサーレ(イタリアン)
(有)キープ ウィル・ダイニング 炭火厨房 炎家(居酒屋)
(株)くふ楽 豚の大地 GINZA離(居酒屋)
ジングコーポレーション(有) トタントタン(居酒屋)
穴とら屋(居酒屋)
(株)スマイルリンクル Big-Pig(お好み焼き)
壱鉄(ジンギスカン)
ヒッコリー(株) オールドヒッコリー(ピザ)
(株)マリノ マリノ(ピザ)
(有)森口愛 とろろや(和食)
(有)楽食 TULLY'S COFFEE(カフェ)
(株)ワイズクルーコーポレーション つゆしゃぶCHIRIRI(しゃぶしゃぶ)
Dining屋台C-style

1次審査を通過した12社はいずれも極めて顧客感動満足のレベルが高い優良企業である。この期間内の顧客ロイヤリティ(再来店意思5点+紹介意思5点:合計10点)が8.2点以上となっている。

【図表:1次審査結果 MSRインデックス】
1次審査結果 MSRインデックス

【図表:MSR総合得点×顧客ロイヤリティ相関関係】
MSR総合得点×顧客ロイヤリティ相関関係


エントリー150社から1次審査を通過した12社
この12社に対して実施した2次審査では、高い顧客感動満足を生み出す経営システムに焦点をあて、さらに、業績(収益性・成長性)や従業員感動満足の高さも審査対象とされた。

【図表:2次審査評価項目】
2次審査評価項目

【図表:2次審査〜最終審査基準(詳細)】
2次審査〜最終審査基準(詳細)

12社の業績評価では売上前年比平均100〜110%がほとんどであり、高い顧客感動満足が安定的な業績的成果につながっていた。さらに、この12社の従業員感動満足度の高さは、全国平均値に比べて非常に高いことも明らかになった。


ノミネート12社の従業員感動満足度
この評価は12社の全社員に20項目におよぶ従業員アンケートを行った結果である。社員一人ひとりのモティベーションの高さ(下図表A)、組織のリーダーシップの高さ(下図表B)により測定した結果である。一般企業の平均と比べてみるといずれの項目においても高い結果となっていることが理解できる。

【図表A:従業員アンケート結果:モティベーション】
従業員アンケート結果:モティベーション

【図表B:従業員アンケート結果:リーダーシップ】
従業員アンケート結果:リーダーシップ


サービスプロフィットチェーン
外食クオリティサービス大賞の審査委員長である清水均氏の言葉を借りれば、「ハッピーな従業員がハッピーな顧客をつくる」のとおり、高い顧客感動満足(CIS)を実現していた1次審査通過企業12社では、定量的な従業員感動満足(EIS)の審査において、まさにこのことが実践され、その高さが証明されたことになる。そして安定的に高い顧客感動満足が、業績成果を生み、その高い業績によって得た成果を、従業員の成長・育成のための教育・システム・内部サービスの充実につなげて、さらに高い従業員感動満足につなげるという好循環サイクル(サービスプロフィットチェーンと呼ばれる)が実践されていたのである。
高い業績と顧客感動満足は店舗力や商品力の高さに加えて、人間力の要素が重要になる。さらに付け加えるのであれば、もはや、人間力がなければ、他店・他チェーンと大きな差別化ができない時代になってきているといっても過言ではない。店舗力や商品力は真似ようと思えばできるかもしれないが、その会社の組織は真似しようと思っても、簡単にはできない。すなわち組織で創り出す人間力は他店・他チェーンとの競争において模倣されにくいのである。
ではどのようにして、サービスプロフィットチェーンを実践しているかを1次審査通過企業12社の傾向や一例を各プロセス別に紹介していきたい。

プロセス別サービスプロフィットチェーン実践事例

■文化・理念・ビジョン浸透
文化・理念・ビジョン浸透ほとんどの企業で経営理念を、経営上もっとも大切なものと定義されており、クレドカードのような形で、P/Aも含め全員が携帯している企業も多かった。優秀賞のアレフ・ぺぺサーレチームでは自社の「使命」に掲げられている「人間の福祉を増大する事業の創設」に沿って、身障者のお客様へのホスピタリティ活動を展開するなど、店舗においても会社の理念に沿った活動が実践され、それが理念浸透へと良い効果を生んでいる。また、同じく優秀賞の楽食ではスタッフの採用段階で会社の理念や店舗理念を熱心に伝え、採用段階から理念教育を行うなど、理念浸透に熱心に取り組んでいた。
3年後の経営ビジョンを鮮明にし、共有・行動レベルまでの経営計画を策定、その活動に現場社員も巻き込んだ活動を行っている企業も多かった。キープウィルダイニングでは、会社の目標に加えて、社員個々人のライフプランも詳細に作成して全員で共有を図っている。また、アレフでは、店舗ごとのライン組織に加えて、テーマ別の店舗横断プロジェクトチーム(キッチンチームやホールチームなど)を設置して、年度ごとに設定される経営課題の解決に向けて柔軟に対応できる組織運営をされていた。

■戦略レベル:マーケティングセグメント・サービスコンセプト・サービスデリバリーシステム(オペレーション)
この項目ではマーケット分析による業態のポジショニングや、そのポジションで優位性を確保するためのノウハウや仕組み・システム化の取り組みを行い、高い業態力を保持し続ける努力をどの程度行っているかを評価している。
1次審査対象の12社のほとんどの業態は、いずれも業態の強みが明確になっており、その強みが顧客から高い支持を受けていた。傾向としては規模が大きい企業ほど、業態力改善や仕組み化の優良な取り組みがされていた。大賞のマリノでは、巨大チーズの中でチーズを絡め、テーブルで調理をするカルボナーラを看板メニューとして開発。顧客からの評価は非常に高く、店の独自の強みが強化されるが、逆に、オペレーションの煩雑化による人件費高騰、原価率の向上により収益性の悪化を招いた。しかし、自店の強み・コンセプトを整理し、その強みを最大化するために、すべてのオペレーションを見直し、大幅な人件費率・原価率の改善に成功。科学的なアプローチを使った業態力改善が功を奏した。
また顧客感動満足を高めるオペレーションシステムにも工夫を凝らしている企業も多い。ワイズクルーでは懐石料理のオペレーションをP/Aでも行えるように料理の提供時間を標準化し、伝票に記載する工夫や、顧客管理システムを整備して、予約電話をもらった際に、前回利用日・前回のオーダー内容・各顧客の嗜好などが閲覧でき、顧客への細やかなおもてなしに活用されている。

■現場の主体性を高める工夫・プロセスマネジメント・仕組みづくり
企業規模の比較的大きいマリノ・くふ楽・アレフは階層別の教育システムに加えて、店舗の活性化・顧客感動満足や従業員感動満足の向上を目的として、P/Aを巻き込む研修体系や活動サポートが仕組み化されている。月に1回、店舗のP/Aが集まり勉強会や成果発表会などを行い、モティベーション向上や顧客感動満足向上の優良事例のベンチマークの仕組みが整備されていた。小規模の企業も朝礼・終礼の徹底に加え、店舗ミーティングや個人面談などはP/Aも巻き込んで行われており、店舗内でのスタッフ間コミュニケーションの活性化する活動が行われていた。優秀賞のスマイルリンクルでは30項目にも及ぶ自己分析チェックシートを毎日活用し、P/Aの人材育成を効果的に行ったり、定着率向上を狙いとした、勤務時間の累計時間により時給が向上する制度を導入していた。
これらの企業で特徴的だったことは人材育成にかける情熱が極めて高いことである。企業の業績向上のための教育という位置づけ以上に、P/Aにいたるまでの人生の成長に会社が徹底的にサポートするという姿勢が現れている企業が多かった。優秀賞のくふ楽では、年に4回は全店休業してイベント(運動や懇親を目的としたものや、店舗活動の成果発表会など)を行っており、機会損出を含めた年間の投資額は2,000万円に及ぶ。また、自社に教育事業部があり、学習塾の事業も行っているくらい、教育には拘りを強くもった活動を行っている。


2次審査を通過した5社による発表
1次審査通過企業12社から、より細かな厳正な評価項目により審査された2次審査を通過した企業5社が選ばれた。2月19日の発表会では、成果の大きさ・継続性・発表の秀逸さの3つの視点が加味され、第一回外食クオリティサービス大賞・準賞・優秀賞の3社が決定した。

大賞:株式会社マリノ
準賞:株式会社くふ楽
優秀賞:株式会社アレフ・ぺぺサーレチーム、株式会社スマイルリンクル、有限会社楽食

いずれの5社においても、業績・顧客感動満足・従業員感動満足の3つの成果視点においては極めて高い成果を上げていた。最終評価も非常に接戦ではあったものの、従業員教育の仕組みの秀逸さに加えて、科学的な業態改善努力により、大きな改善成果を創出したマリノが大賞の座を獲得された。
大賞を受賞されたマリノには賞状・トロフィーの授与に加えて、大賞賞金100万円が贈呈された。準賞のくふ楽には同じく50万円、優秀賞の3社には20万円の賞金が贈られた。なお、大賞を受賞されたマリノの水野社長からは、受賞式の場で、「賞金は社会貢献に活用してほしい」との寄付の要請を頂いたことも付け加えておきたい(別ページ ※注1 参照)。


第二回外食クオリティサービス大賞に向けて
この誌面を借りて、改めて5社とその従業員の皆様に対し、祝福とお礼を申し上げたい。 当日の発表イベントにて各社とも大変すばらしい発表を頂いた。外食クオリティサービス大賞の設立趣旨は、この5社のようにすばらしい取り組みをされている外食企業の取り組みを業界に発信・共有することで、外食業界の発展に寄与することであるので、その発表内容が、次代の外食業界の活性化を担う各社の今後の取り組みの参考となれば、このうえない喜びである。
当日イベントに来場された参加者アンケートでは、「パワーをもらった。ビジネスの切り口も多く非常に参考になった」「外食産業を選び、入社して良かったと思う瞬間だった」「外食産業は素晴らしいと改めて感じた。」「業界の向上には業界内部での研究実践が必要であるし、飲食業ではなく外食業として世の中に認知させていくことがすばらしい。そうした取組みにより、業界内をリードする企業が生まれることは日本経済の活性化につながると思う。大衆を相手にする外食業界の発展が楽しみです」などのお声を頂くことができ、主催者を代表して、このイベントを通じて、モティベーションを高められた方や、外食業界により誇りを感じていただいた参加者の方が多数いらっしゃったことは大変うれしく思う。
MSRのサービスを開始して8年の歳月が経つ中で、たゆまない努力を続け、お客様の感動、はたらく従業員の感動・そして成長に拘って、すばらしい取り組みを実践されている企業経営者・従業員の方々との出会いがあった。また、私共も、そのような方々の取り組みから様々なことを勉強させていただいた。この第一回外食クオリティサービス大賞が、そのように一生懸命に努力をされ、たゆまない経営努力をされている企業の皆様にとって、また外食業界がもっとすばらしい業界として発展していくことに少しでも寄与できるものであれば幸甚である。
第二回外食クオリティサービス大賞も来年の同時期に実施をする予定で、1次審査期間は第一回同様2007年5月〜12月までの毎月のMSR結果をもって行われる。来年度は本年度以上にすばらしい取り組みが発表されることを期待し、また、それが外食業界にとって価値あるノウハウ共有の場になることを心から願いたい。日ごろよりMSRを活用頂いている外食企業の皆様にも、ぜひ、第二回の大賞を目指して頂ければと願う。
最後になるが、この賞の設立ならびにイベント開催において多大なサポートを頂いた協賛企業各社(株式会社インフォマート・株式会社カクヤス・サントリー株式会社・店舗流通ネット株式会社・株式会社前田・株式会社リンク・ワン)には深く感謝を申し上げたい。また、この賞の設立趣旨にご賛同いただき、様々なアドバイスやご協力を賜った、審査員の清水均氏・小山周三氏・千葉哲幸氏にも心からお礼を申し上げたい。
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